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今週末見るべき映画

​* 雑誌「暮しの手帖」の元副編集長で映画ジャーナリストの二井康雄が、おススメしたい新作の

「今週末見るべき映画」についてレビューします!

「ようこそ、革命シネマへ」

――紛争、内戦の続いたスーダン。1960年代から70年代にかけて、海外で映画を学び、映画作家になった人たちもいる。イブラヒム・シャダッド、スレイマン・イブラヒム、エルタイブ・マフディ、マナル・アルヒロの4人は、1989年、映画製作集団「スーダン・フィルム・グループ」を設立するが、同じ年、オマル・バシール軍事政権の成立で、表現の自由を奪われてしまう。そして、2015年。収監されたり、亡命したりで、すでに70歳にもなろうとする4人は再会する。

(2020年 4月 2日  「二井サイト」公開)

 映画への愛に満ちあふれたドキュメンタリー映画「ようこそ、革命シネマへ」(アニモプロデュース配給)は、映画の持つさまざまな力を見せてくれる。それは、社会を動かす力であり、娯楽であり、芸術でもある。

 

 2015年、アフリカのスーダン。首都のハルツーム近郊でも、いつも停電があり、すでに何日も電気が止まっている。

 

 老人が4人ほど、暗闇のなかにいる。かつて映画監督だったイブラヒム・シャダッド、スレイマン・イブラヒム、エルタイプ・マフディ、映画プロデューサーだったマナル・アルヒロだ。

 懐中電灯の灯りのなかで、スマホで映画撮影のまねごとを始める。セリフは、ビリー・ワイルダー監督の「サンセット大通り」のラストシーンだ。

 

 ラジオで、「スーダン映画界のヒーローは死んだ」という番組を放送している。70年代、80年代に活躍したイブラヒムらがゲストで出演し、「映画が死んだのは裏切り者のせい」などと発言する。裏切り者とは、軍事独裁政権のことだろう。

 イブラヒムたちは、暗闇の中、かつての事務所でビデオや資料を探している。エドゥアール・モリナロ監督の「夜食」や、フランソワ・トリュフォー監督の「柔らかい肌」などがある。16ミリのカメラや、イブラヒムがドイツで映画の勉強をしていた時のメモやノートが見つかる。また、イブラヒムが撮影する予定だった映画「クロコダイル」の台本や、ワニの写真が保存されている。軍事クーデターのせいで、撮影できなかった、幻の映画だ。 

 4人は、とりあえずあちこちを回り、野外での映画上映を始めようとする。みんなで、チャップリンの「モダン・タイムス」を見る。4人は、かつて「ハルツーム・シネマ」という映画館だった場所に佇み、試しに、ここで映画を上映してみようと思う。オーナーに電話をするが、断られてしまう。 

 

 スレイマンは、モスクワの全ロシア映画大学での卒業制作で撮影した「アフリカ ジャングル 太鼓と改革」のフイルムを探している。ロシアまで電話をするが、フィルムは見つからない。1995年当時の古い手紙の束が出てくる。エジプトからカナダに移住したイブラヒムの書いた手紙だ。映画作家たちは、みんな逮捕され、厳しい尋問を受けていたことが分かる。 

 4人は、野外上映が出来る場所を見つける。この「革命シネマ」というスペースは、長く放置されたままになっている。ゴミやホコリだらけだが、古いフィルムが多く見つかる。みんなに見たい映画を聞いて回り、アンケートをとる。「外国映画」「スターウォーズ」「アクション映画」「イギリス映画」などなどの答えが返ってくる。

 「ハラハラするアクション映画で、最近のものがいい」と4人は思う。上映は、クエンティン・タランティーノ監督の「ジャンゴ 繋がれざる者」に決まる。ポスターも出来る。ただし、正式な上映許可を国に申請しなければならない。果たして、許可はおりるのだろうか。 

 

 4人の性格が穏健で、とてもいい。淡々と、ひたすら、映画を愛している様子が伝わってくる。イブラヒムは、ドイツで映画を学び、エジプトに亡命した後、カナダに移住する。スレイマンは、モスクワでドキュメンタリーの映画製作を学ぶ。また、エルタイブは、寡黙だが機転が利く。マナルはプロデューサーとして、3人を支える。

 4人は、決して悲観しないし、不平や不満を言わない。被害者意識もない。他者を思いやり、尊重する。そしてユーモアたっぷり、なにより映画への揺るがない信念がある。

 スーダンの映画が、ほんの少し、挿入される。イブラヒムの撮った「ロープ」(1987年)、「狩猟パーティ」(1964年)、エルタイブの撮った「墓」(1973年)、「駅」(1988年)など。見られるのであれば、全編、見て見たいと思う。 英語のタイトルは「TALKING ABOUT TREES]。ベルトルト・ブレヒトの有名な詩「あとから生まれてくるものたちへ」の一節「今、木々を語るのは罪深きことだ。それは巨大な悪について、口を閉ざすのと同じだから」の引用と思われる。 

 

 こんなすてきなドキュメンタリー映画を撮ったのは、フランスで映画を学んだスハイブ・ガスメリバリ。もちろん、ヌーヴェルヴァーグの洗礼を受け、黒澤明、小津安二郎、ツァイ・ミンリャンの映画が好きだという。スーダンと、フランス、ドイツ、チャド、カタールの合作となる。いつか、スーダンで、イブラヒムやスレイマン、エルタイブの新作映画が製作、公開されることを願うのみ。

☆ 2020年4月4日(土)~ ユーロスペースで公開の予定でしたが、4日、5日(日)が臨時休館のため、4月6日(月)からの公開になります。 ほか全国順次公開!!

* これまでの記事は、ブログページ  に移行しました。併せてお楽しみください!

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