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今週末見るべき映画「ゲティ家の身代金」

――石油王ゲティの孫、ゲティ3世が誘拐される。身代金は1700万ドル。ゲティは支払いを拒否、その顛末とは!?

1973年、世界じゅうに報道された、身代金目当ての誘拐事件が映画になった。「ゲティ家の身代金」(KADOKAWA配給)だ。

  史実に基づいて、正攻法、サスペンスたっぷりに演出したのはリドリー・スコットだ。「エイリアン」「ブレードランナー」「ブラックレイン」「グラディエーター」を撮っている。

 最近では、「オデッセィ」「エイリアン:コヴェナント」がある。どこかに、ちょっぴり、残酷な表現が用意されている。その都度、今回はどのようなシーンか、期待が高まる。

 石油で巨万の富を築いたジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)。その資産は50億ドル、ざっと1兆4000億円。

 ゲティの孫のひとりで、17歳になるジャン・ポール・ゲティ3世(チャーリー・プラマー)が、ローマで誘拐される。イタリアのマフィアのような組織「ンドランゲタ」の仕業らしい。

 犯人側は、1700万ドル(当時のレートで約50億円)もの身代金を要求する。ゲティにとっては、払えない金額ではないが、多くの孫のいるゲティは、一度、金を払うと、さらに誘拐事件が起こるのではないかと、支払いを拒否する。

 金持ちには金持ちの論理があるといわんばかりに、ゲティは金に対しては細かく、その大邸宅には、来客専用の公衆電話を設けたほどの、いわばケチである。また、高級ホテルに泊まっても、下着や靴下は自分で洗う。 孫が誘拐されたというのに、ゲティにとっては、その日その日の株価のほうが大事のようだ。

 ゲティの息子で、ポールの父親はドラッグにおぼれ、妻のゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)は、夫と離婚、ポールの親権は、ゲイルにある。

 ゲティは、何もしない訳ではない。誘拐事件の交渉人として、元CIA職員で、いまは部下であるフレッチャー・チェイス(マーク・ウォールバーグ)を、ゲイルのもとに向かわせる。

 ポールは、南イタリアにある、ンドランゲタのアジトらしき場所に監禁される。実行犯のリーダー、チンクアンタ(ロマン・デュリス)は、ポールに母親宛ての手紙を書かせる。「身代金を払わないと、指を切断される」と。

 ゲティは、身代金の支払いを拒否し続ける。ポールの行方は、一向に分からない。 ゲティは、支払いを拒否したままで、フレッチャーの交渉も進まない。犯人側にも、あせりが出始める。義父、公証人、犯人側との間で、ゲイルの苛立ちが増していく。

 映画は、ケヴィン・スペイシーがゲティに扮し、いったんは完成していた。そこに、ケヴィン・スペイシーの男性へのセクハラ疑惑が起こり、急遽、クリストファー・プラマーが代役を務めることになる。

 至急の撮り足しとなったが、結果的には、クリストファー・プラマーのほうが、実物のゲティの年齢に近いこともあって、むしろ、よかったのではないか。今年のアカデミー賞では、クリストファー・プラマーは、史上最高年齢で、助演男優賞にノミネートされた。

 息子を気遣い、義父と交渉人と渡り合う母親ゲイル役の、ミシェル・ウィリアムズがうまい。「マリリン 7日間の恋」以来、ごひいきの女優さんだ。

  スピーディな展開、ほどよいサスペンス。80歳を超えてもなお、リドリー・スコットは若々しく、瑞々しい。

 すでに事件は、いろんな報道で周知の事実である。ネタバレなどは存在しない。いかに、おもしろく、観客を誘うか、だろう。リドリー・スコットは、「エイリアン」にしろ、「テルマ&ルイーズ」にしろ、強い女性の出てくる映画を多く撮っている。そういったリドリー・スコットの手練手管、ことに、ポールの母親を演じたミシェル・ウィリアムズに注目の上、その強い女性像をお楽しみください。

  蛇足ながら、ジェームス・ブラウンの「イッツ・ア・マンズ・マンズ・マンズ・ワールド」が聞こえてくる。「この世は男の社会 すべては男が中心 でも何も生まれない 女がいなければ・・・」。

☆2018年5月25日(金)~ TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ新宿など全国ロードショー

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