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年末年始見るべき映画 その2の1「また、あなたとブッククラブで」

 「年末年始見るべき映画 その2」は、2作品です。コロナ禍は収束の気配なく、政府の無能無策ぶりに、あきれるばかり。いまさらGoToの一時停止や外出自粛、営業短縮要請でブレーキをかけても、遅すぎる。まったく、ひどい政府だ。せめて庶民は、年末年始に、優れた映画を見てのうさ晴らし。どちらも、自らの人生を顧みるにふさわしい、超おすすめの傑作で、12月18日(金)の公開です。以下に。


●「また、あなたとブッククラブで」(キノフィルムズ配給)


 老いてもなお美しい4人の女優が揃い踏み。いちばん年長のジェーン・フォンダが1937年生まれ。ついで、ダイアン・キートンとキャンディス・バーゲンが1946年生まれ。いちばん若いメアリー・スティーンバージェンですら、1953年生まれだ。


 もう、この顔ぶれだけで、見たくなる。見た。期待通りだった。面白い。


 4人は15年来の仲良しで、それぞれのキャリアを重ねた今も、共通の本を読み合い、話し合う集まりを定期的に開いている。映画を見ているうちに、4人の性格やキャリア、置かれている状況が分かってくる。


 ダイアン(ダイアン・キートン)は、40年連れ添った夫を亡くしたばかり。母親を気遣う娘ふたりは、同居を申し出るが、拒否し続けている。最近、飛行機で知り合ったパイロットのミッチェル(アンディ・ガルシア)といい雰囲気になっている。かつて、「ゴッドファーザーPART3」で共演した二人だが、あまりもの役柄の違いに、驚くキャスティングだ。


 ビビアン(ジェーン・フォンダ)は、会社経営に成功したやり手の、いわば独身貴族。いろんな男性と浮き名をながしている。読書会に、ほかの3人に刺激を与え、少しでも日常に変化があればいいと、課題図書に大ベストセラーになった「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を選ぶ。つい最近、40年ぶりに、かつて付き合っていたアーサー(ドン・ジョンソン)と再会する。「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」は、映画にもなったが、ドン・ジョンソンの娘ダコタ・ジョンソンが主演。だから、ドン・ジョンソンが登場するたびに、思わず、ニヤリとしてしまう。これまた絶妙のキャスティングだ。


 シャロン(キャンディス・バーゲン)は、かつての離婚経験が、いまだトラウマになっていて、「男などは必要ない」と思っているが、意外に実行力がある。長く連邦判事を務めるインテリで、ユーモアのセンスがある。「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」からの刺激や、みんなとの雑談から、マッチング・アプリに精を出す。そこで知り合ったのが、会計士のジョージ(リチャード・ドレイファス)である。


 キャロル(メアリー・スティーンバージェン)は、いわゆる良妻賢母タイプで、結婚生活35年になる。夫のブルース(クレイグ・T・ネルソン)は退職してこのかた、体力、気力の衰えが目立つ。


 4人は、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を読み、話し合う。ビビアンはともかく、あとの3人にとって、この本は刺激的だ。やがて、多くの表現から刺激を受けた4人は、さらにまた、新しい人生に、一歩、踏み出していく。


 いわば、テレビドラマや映画でヒットした「セックス・アンド・ザ・シティ」のお姉さん版。驚くのは、もうかなりの年齢なのに、みんな、たいへん若く見える。ジェーン・フォンダは、いま82歳。とてもそんな年齢には見えない。ダイアン・キートンしかり、キャンディス・バーゲンしかり。しかも、楽しくて、下ネタも交え、くすっと笑えるセリフやシーンが続出する。


 老いてもなお、異性への興味はあらまほしい。まるっきり、異性に興味を無くしても、復活することがある。前向きに、豊かな人生を過ごすためにも、異性への興味は重要だろう。


 監督は、これが長編映画のデビューになるビル・ホルダーマン。長く、ロバート・レッドフォードの会社に在籍し、「さらば愛しきアウトロー」などのプロデューサーを経験している。1977年生まれというから、老獪な4人の大女優たちの息子の世代だ。大女優たちへの監督の演出は、さぞかし多くの気遣いがあったと思われる。監督は、4人の女優それぞれに、過不足なく見せ場を用意する。もちろん、4人の男優にも。

 それにしても、ジェーン・フォンダの若々しさに驚く。とても80歳を過ぎた女性には見えない。 


 ともあれ、大事なのは、何歳になっても、異性への興味と好奇心を失わないこと。4人の魅力的な老女は、経済的に恵まれているかもしれないが、たとえ、お金がなくても、好奇心を持ち続けることは可能と思われる。


 ある日の図書館。老いた人たちが大勢、新聞や雑誌を読んでいる。ほかに行くべき場所がないかもしれないが、なにもしないよりはましかと思う。映画を見たりするのもいいかもしれない。ともかく、好奇心を持ち続けることが大事。4人の変化は、同年代の人たちにとって、晩年を生きる上で、大きなヒントを与えてくれるだろう。



☆ 2020年12月18日(金)~ ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほか全国順次公開!!


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