top of page

今週末見るべき映画「セラヴィ!」

――ベテランのウェディング・プランナー、マックスに、古城が会場となる豪華絢爛な結婚式の依頼が舞い込む。てんやわんやしながらの準備に、抜かりはなかったはずなのに……。常套句「これが人生!」と題された傑作コメディだ。

 2017年、フランスで「セラヴィ!」(パルコ配給)が公開され、「ダンケルク」「ラ・ラ・ランド」を超えるヒットだったという。観客層がおとなである。いかにも、フランスらしい。

 舞い込む仕事は、ほぼなげやり、そろそろ潮時と、引退が頭をよぎる初老のウェディング・プランナー、マックス(ジャン=ピエール・バクリ)に、なんと17世紀の古城での結婚式のプロデュース依頼が舞い込む。新郎はピエール(バンジャマン・ラヴェルヌ)という、いささか自分勝手な男。

 かつて経験のない大仕事で、マックスは、「七人の侍」よろしく、あわてて、スタッフをかき集める。キッチンやホールのスタッフ、音楽バンド、カメラマンなどなど。

 バンドのボーカル担当のジェームス(ジル・ルルーシュ)は、かなり目立ちたがり屋。カメラマンのギイ(ジャン=ポール・ルーヴ)は、報道ジャーナリスト志望とあって、いささか屈折している。いつも、よれよれの服を着ているジュリアン(ヴァンサン・マケーニュ)は、マックスの義弟にあたり、マックスを手伝うことになる。

口の悪いマックスは、ワンマンで独裁者めいたところがあるが、心根は優しいところがある。スタッフは、アフリカ系、アジア系と多様な人種構成である。複雑な雇用問題も横たわっている。そんななか、マックスは、ぎくしゃくしながらも、本番の準備を進めていく。

 結婚式、パーティが始まる。ことごとく、ハプニングの連続。不祥事が相次ぐ。結婚式、パーティは、ぶじ、開催できるのだろうか。

 イスラエル出身のジャズ・ベーシスト、アヴィシャイ・コーエンの手になる音楽、選曲が、ドラマの進行にぴったりで、とてもいい。パーティの始まりには、ジル・ルルーシュの歌う「Lovely Day」が。さらに、「Seven Seas」や、「Se Bastasse Una Canzone」、有名な「イパネマの娘」、ボーイズ・タウン・ギャングがディスコ調でカバーした「君の瞳に恋してる」などなど。

 脚本を書き、監督したのは、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュで、やはり大ヒットした「最強のふたり」のコンビである。2015年11月、パリで無差別テロが起きる。ふたりの監督コンビは考える。「みんな、落ち込んでいる。純粋に騒いで楽しめる雰囲気の作品を作りたい」と。

 多くの人物が登場するが、どのような人物かが、きちんと描かれている。かつて、小津安二郎だったと思うが、「社会の出来事にはあまり興味はない。人間がきちんと描かれていれば、自ずと社会が描かれる」と語ったと聞く。エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュもまた、ノー天気なコメディを作ったのではない。優しいまなざしによる深い人間観察、描写の結果が、あざやかに、フランスのいまを伝える。

 基本的には、優れた脚本家でもあり、芸達者のジャン=ピエール・バクリのひとり芝居だが、脇に個性たっぷりの俳優がズラリ。新郎ピエール役のバンジャマン・ラヴェルヌは、コメディ・フランセーズの団員でもある。新郎の母親役で、エレーヌ・ヴァンサンがちょこっと顔を出す。マックスの片腕的な役割の女性ジョジアーヌを、スザンヌ・クレマンが演じる。グザヴィエ・ドラン監督の「マイ・マザー」「わたしはロランス」「Mommy/マミー」でおなじみだろう。

 映画を見て思う。「人間万事塞翁が馬」「禍福は糾える縄の如し」、悪いこともあれば、いいこともある。さらに思う。執着するのも人生だが、頓着しないのもまた人生。まさに「セラヴィ!」。

☆2018年7月6日(金)~ 渋谷シネクイント、新宿シネマカリテ、池袋HUMAXシネマズほか全国ロードショー

タグ:

最新記事
アーカイブ
タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page