友人Mさんへの手紙(2)「第31回東京国際映画祭2018」を見て
Mさん、メール、ありがとうございます。今日は、11月4日(日)です。Mさんは、「グランプリは該当作なし」とおっしゃっていましたが、そうもいかないようで、ちゃんと受賞作が決まりましたね。
東京グランプリは、フランスのミカエル・アース監督の「アマンダ(原題)」。ダヴィッドという青年が、無差別テロで姉を亡くし、その娘でアマンダという姪っ子の面倒をみることになる。ヴァンサン・ラコスト扮するダヴィッドは、いまどき珍しい、とても人のいい青年で、好感が持てました。
脚本賞も「アマンダ(原題)」で、ミカエル・アースとモード・アメリーヌ。
芸術貢献賞は、レイフ・ファインズ監督の「ホワイト・クロウ(原題)」で、バレエ・ダンサー、ルドルフ・ヌレエフの半生を描いたもの。現役ダンサーのオレグ・イヴェンコが熱演。
芸術貢献賞は、妥当なところでしょうか。
男優賞は、「氷の季節」のイェスパー・クリステンセンで、貧困から逃れるために、娘を地主に嫁がせる父親役でした。
女優賞は、エドアルド・デ・アンジェリス監督の「堕ちた希望」に主演したピーナ・トゥルコ。ナポリ郊外にある人身売買組織をめぐってのドラマで、彼女の表情の変化が、とてもよかったです。これは、監督賞も受賞。
競馬の予想のように、まったく外れてしまいましたが、「審査員が違えば、まったく別の結果になっていた」と、審査委員長のブリランテ・メンドーサが言うように、きっとそうだろうと妙に納得しました。
観客の投票で選ぶ観客賞は、阪本順治監督の「半世界」でした。見ていないので、なんとも言えませんが、あまり見たい映画とは思いません。
多く見たのは、「ワールド・フォーカス」部門で、以下の12本。コンペティション作品と同様、採点しました。列挙すると、
A「カーマイン・ストリート・ギター」(カナダ) ロン・マン監督
B「ある誠実な男」(フランス) ルイ・ガレル監督
B「世界の優しき無関心」(カザフスタン、フランス)アディルハン・イェルジャノフ監督
B「われらの時代」(メキシコ、フランス、ドイツ、デンマーク、スウェーデン)
カルロス・レイガダス監督
B「イングマール・ベルイマンを探して」(ドイツ)マルガレーテ・フォン・トロッタ監督
B「彼ら」(イタリア) パオロ・ソレンティーノ監督
B「トゥー・ダスト」(アメリカ) ショーン・スナイダー監督)
B「それぞれの道のり」(フィリピン) ブリランテ・メンドーサ監督、ラヴ・ディアス監督、
キドラット・タヒミック監督
B「プロジェクト・グーテンベルク」(香港) フェリックス・チョン監督
B「サラとサリームに関する報告書」(パレスチナ、オランダ、ドイツ、メキシコ)
ムアヤド・アラヤン監督
C「十年」(タイ、香港、日本)
アーティット・アッサラット監督、ウィシット・サーサナティヤン監督、
チュラヤーンノン・シリポン監督、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督
C「ワーキング・ウーマン」(イスラエル) ミハル・アヴィアド監督
Aランクは、「カーマイン・ストリート・ギター」のみ。ニューヨークの古い建築が壊される。そこから出る材木で、ギターを作る職人がいる。その店には、驚くような有名な人物が、ギターの購入や修理でやってくる。ギター好きには、ゾクゾクする映画。
残念だったのは、オリヴィエ・アサイヤス監督の「ノン・フィクション」(フランス)を見逃したこと。日本でも、いずれ公開されると思うので、その時は、真っ先に見るつもりです。
あと1本、「CROSSCUT ASIA」部門で、ラヴ・ディアス監督の「悪魔の季節」(フィリピン)を見ました。上映時間は3時間54分。
1970年代後半、マルコス政権下の田舎の村。失踪した女医の妻ロリーナを、詩人の夫ヒューゴが捜索する。全編、セリフはアカペラの朗唱で、まるで、オペラの一部を見ているよう。弾圧された人たちは、次々と死んでゆく。少し、諄い部分はありますが、これがラヴ・ディアス監督の持ち味なのでしょう。もちろん、Aランクです。
8日間ほどで、30本ほどの映画を見ました。さすがに、疲れました。Mさんはいかがでしたか? また、どこかでお目にかかれるでしょう。11月17日(土)から始まる東京フィルメックスあたりでしょうか。長くなりました。どうかお元気で。とりあえず。
11月6日(火)