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「第19回東京フィルメックス」11/17~11/25 開催へ! その見どころは?


第19回東京フィルメックスが、この11月17日(土)から25日(日)まで、有楽町朝日ホールを中心に、TOHOシネマズ日比谷、有楽町スバル座で開催される。

 広域アジア中心の作品とはいえ、毎年、上映される作品のレベルは高く、粒そろい。著名監督の過去の傑作を見るチャンスでもある。

 今年の見どころとして、こうある。

☆「オープニングはホン・サンス、クロージングはジャ・ジャンクー!」。

 韓国、中国のあまたいる映画監督のなかで、大好きなふたり。すごいなあ、と思う。

☆「コンペティション部門で感じる、アジアからの10本の風」。

 毎年のことだが、個性豊かで、アート系の作品がズラリ。

☆「世界最前線の映画作家たちが集結」。

 今年は、アモス・ギタイ、リティ・パン、スタンリー・クワン、ツァイ・ミンリャンの作品が見れる。しかも、世界の映画祭で称賛を集めている作家たちの最新作だ。

☆「日本映画最前線」。

 ベテラン作家から、若手の意欲作が集結する。

☆「日本でもファンの多いアミール・ナデリ初期作から最新作の上映」。

 これまたすごいと思う。

 まず、コンペティション作品で、アジアの新進作家たちの、2017年から2018年にかけて製作した作品10作品が並ぶ。

☆「シベル」(フランス、ドイツ、ルクセンブルク、トルコ) チャーラ・ゼンジルジ、ギヨーム・ジョヴァネッティ監督。

 村を荒らす狼を狩ることでしか存在を示せない、疎外された少女がいる。ある日、山小屋に潜伏する青年と出会い、大きな波紋が広がっていく。

☆「アイカ(原題)」(ロシア、ドイツ、ポーランド、カザフスタン、中国) セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督。

 モスクワに出てきたものの、借金に苦しむキルギス女性の過酷な日々を綴る。

☆「マンタレイ」(タイ、フランス、中国) プッティポン・アルンペン監督。

 タイの沼で、金髪の男が、傷ついた男を救うが、その男は、話すことができない。やがて、金髪の男は、自らの過去を語り始める。

☆「幻の土地」(シンガポール、フランス、オランダ) ヨー・シュウホァ監督。

 シンガポールで、中国からの移民労働者が失踪する。その労働者の過去がどのようなものかが、明らかになっていく。

☆「幸福城市」(台湾、中国、アメリカ、フランス) ホー・ウィディン監督。

 2056年の台北。無軌道な刑事が登場し、刑事の青年時代と、少年時代が描かれ、現実と映画の時間が逆行していく。

☆「自由行」(台湾、香港、シンガポール、マレーシア) イン・リャン監督。

 創作活動の自由を得るために、亡命せざるを得ない映画作家の苦悩、葛藤に、監督自らを投影する。

☆「轢き殺された羊」(中国) ペマツェテン監督。

 舞台は、チベットの広大な草原。ジンパという同じ名前を持つふたりの出会いを、現実と幻想を入り交じえて描く。

☆「ロングデイズ・ジャーニー・、イントゥ・ナイト(仮題)」(中国、フランス) ビー・ガン監督。 

  舞台は、中国・貴州省の凱里。ルオは父の葬儀で帰郷して町を歩く。ルオの胸中に、過去のさまざまな記憶がよみがえってくる。

☆「象は静かに座っている」(中国) フー・ボー監督。

 中国の北部の小都市。今の生活から抜け出せない4人のある一日を、3時間54分で描いた異色作。監督のデビュー作だが、自殺したため、これが遺作でもある。

☆「夜明け」(日本) 広瀬奈々子監督。

 哲朗は、地方の小さな町で木工所を営んでいる。ある日、哲朗は、河辺で倒れていた青年を救い、木工所で働くよう、手を差し伸べる。やがて、青年の過去がどのようなものかが明らかになっていく。

 以上のコンペティション作品を審査する委員長は、ウェイン・ワン。ポール・オースターの小説「スモーク」、「ブルー・イン・ザ・フェイス」や、「千年の祈り」を撮った監督だ。最優秀作品賞、審査員特別賞などの授与式は、11月24日(土)、17時20分から有楽町朝日ホールにて開催される。

 特別招待作品は、全部で16作品。うち、オープニング作品は、ホン・サンス監督の新作「川沿いのホテル」(韓国)。漢江の閑静なホテルに、老いた詩人とその息子たちや、女性たちが滞在、会話を重ねる。何気ない会話だけれど、人生の機微など、そこに大きなテーマがひそんでいる。

 クロージング作品は、ジャ・ジャンクー監督の新作「アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト(原題)」(中国)だ。中国・山西省の大同と、三峡ダムの町、奉節を舞台に、裏社会に生きる男女の、18年間もの関係が、中国社会の変遷と絡めて描かれる。

 そのほかの特別招待作品は、以下に。

☆「エルサレムの路面電車」(イスラエル) アモス・ギタイ監督

☆「ガザの友人への手紙」(イスラエル) アモス・ギタイ監督

☆「名前のない墓」(フランス、カンボジア) リティ・パン監督

☆「8人の女と1つの舞台」(香港) スタンリー・クワン監督

☆「アルファ、殺しの権利」(フィリピン) ブリランテ・メンドーサ監督

☆「あなたの顔」(台湾) ツァイ・ミンリャン監督

☆「盗馬賊」(中国) ティエン・チュアンチュアン監督

☆「草の葉」(韓国) ホン・サンス監督

☆「PLANETIST」(日本) 豊田利晃監督

☆「盆唄」(日本) 中江裕司監督

☆「共想」(日本) 篠崎誠監督

☆「僕はイエスが嫌い」(日本) 奥山大史監督

☆「空の瞳とカタツムリ」(日本) 斎藤久志監督

☆「コンプリシティ」(日本) 近浦啓監督

 外国映画は、もう見たい作品ばかり。とくに見たいのは、「エルサレムの路面電車」だ。エルサレムを走る路面電車に、ユダヤ人、パレスチナ人、旅行客、移民など、いろんな人が乗り合わせる。いくつかのエピソードが、オムニバスふうにつながっていく。アモス・ギタイ作品にしては珍しい、コミカルなタッチらしい。

 同時上映で、同じアモス・ギタイ監督の短編(34分)「ガザの友人への手紙」も、見逃せない。イスラエルと、パレスチナの俳優たちと、監督のアモス・ギタイが、パレスチナ問題についてのいろんなテキストを朗読するドキュメンタリーで、ガザの映像が、朗読にオーバーラップしていく。

 クメール・ルージュの告発を続けているリティ・パン監督の新作「名前のない墓」も見逃せない。虐殺された人の墓が、どこにあるか分からない。畑の中から遺骨が出てきたりする。監督本人も映画に登場する。

 麻薬でもめるフィリピンのマニラ。「アルファ、殺しの権利」でのブリランテ・メンドーサ監督の視点は、ある警察官の表と裏の顔に注がれる。

 ツァイ・ミンリャン監督の新作「あなたの顔」も見たい一本。さまざまな顔を映すことで、見えてくることとは何か。坂本龍一の音楽も楽しみだ。

 1986年に撮ったティエン・チュアンチュアンの「盗馬賊」にも注目だ。舞台はチベット。家族のために馬泥棒を続ける男の悲劇だ。

 ホン・サンス監督作品がもう一本。「草の葉」だ。カフェで言い争う男女がいる。ここから、さまざまな人間関係が露わになっていく。ホン・サンス節が楽しめるはず。

 日本の監督の、六人六様の表現にも期待したい。

 今年の特集上映は、アミール・ナデリで、旧作2本、新作2本の計4作品だ。

 1974年に、イランで撮ったのが「ハーモニカ」と「期待」。「ハーモニカ」は、ハーモニカの所有をめぐって、子どもたちの騒動を描くが、もちろん、ときの政治体制の隠喩だろう。「期待」の舞台は、イラン南部の海辺の村。ガラス器に入った氷が溶けないうちに、持ち帰ろうとする少年の話で、セリフはなく、美しい映像が連続する。

 アミール・ナデリが脚本を書き、アメリカで撮った最新作が「華氏451(2018)」だ。レイ・ブラッドベリの傑作小説「華氏451度」を、フランソワ・トリュフォーが、「華氏451」というタイトルで映画にしたが、これはそのリメイク。

 本の所持が禁じられている未来社会。本の所持を見つけると、焼きはらうファイアマンがいる。抵抗した人間は、ひとりひとりが一冊の本になり、本そのものを暗記していく。リメイクの監督は、「ドリームホーム 99%を操る男たち」を撮ったラミン・バーラミ。ファイアマン役にマイケル・B・ジョーダン、ファイアマンの隊長役にマイケル・シャノンという豪華配役だ。

 もう一本の新作が、「マジック・ランタン」。古い映画館で、35ミリフィルムの映写技師として働く若者がいる。現実と幻想が入り交じり、映画へのオマージュに満ちている。もう70歳を過ぎているジャクリーン・ビセットが出ている。

 以上、計29作品。どれだけ見ることができるか分からないが、できるだけ、たくさん、見てみたい。

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