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今週末見るべき映画「芳華-Youth-」

――1976年から1995年のざっと20年間、文化大革命、毛沢東の死、中越戦争と、激動の中国にあって、人民解放軍の歌劇団である文工団(正確には文芸工作団)に所属する若者たちがいた。時代に翻弄されながらも、とにもかくにも若者たちは、生き抜いていく。その青春群像は、切なく、胸を打つ。

(2019年4月10日「二井サイト」公開)

アメリカ在住の中国人作家、ゲリン・ヤンの原作を、フォン・シャオガン監督が映画化した 「芳華-Youth-」(アットエンタテインメント配給)は、激動の中国を生き抜いた若者たちの群像劇だ。

 1976年。17歳の少女ホー・シャオピン(ミャオ・ミャオ)は、文工団の舞踏班に入団が許される。シャオピンは、政治犯で収容されている実の父に、軍服姿を見せたくて、同室の先輩リン・ディンディン(ヤン・ツァイユー)の軍服を無断で拝借して、写真館に向かう。

 舞踏や楽器演奏を行う文工団の役目は、演習中の軍隊への慰問だ。慰問に向かう途中、寮長のハオ・シューウェン(リー・シャオハン)は、写真館に飾ってあったシャオピンの軍服姿の写真に気付く。シャオピンは、寮長たちから問いつめられる。

 連日、舞踏の練習が続く。シャオピンは、才能のあるダンサーだが、どこか不器用で、いまだ、仲間からのいじめにあっている。そんなシャオピンをかばってくれるのが、同僚のシャオ・スイツ(チョン・チューシー)だ。

シャオピンを文工団に引率してきたのは、純朴な青年のリウ・フォン(ホアン・シュエン)で、もとはダンサーだったが、いまは裏方として文工団を支えている。リウ・フォンは、ディンディンに想いを寄せている。

 1976年、毛沢東が亡くなる。文工団の公演が中止になる。江青ら四人組が追放され、時代は確実に移り変わっていく。

 1978年、文化大革命が終結。みんなは、放送や発売が禁じられているテレサ・テンの歌「からみあう愛情」を、カセットテープで聴いている。「深い愛つむぐ千万の糸 いつも想うあなたのこと この想いどうか受けとめて 永遠に変わらない 一生愛しつづけるわ……」。リウ・フォンが思わず呟く。「心にしみる歌詞だ」

 大学に進まず、文工団に残ったリウ・フォンは、ディンディンに想いを打ち明けるが、振られてしまう。リウ・フォンは伐採部隊に異動、シャオピンもまた、野戦病院に異動となる。

 1979年、中越戦争が始まる。時代に翻弄される若者たち。やがて、文工団は解散、若者たちは、それぞれの人生を歩み続ける。

 監督のフォン・シャオガンは、20歳から数年間、文工団に在籍したという。原作のゲリン・ヤンもまた、12歳にして、四川省の文工団に入団、バレエを習っている。ゲリン・ヤンは、脚本家でもあり、「シュウシュウの季節」「花の生涯~梅蘭芳~」「妻への家路」など、多くの映画の脚本を書いている才女だ。

 映画は、リウ・フォンを慕うダンサー、スイツが過去を回想するスタイルで語られる。若者たちの瑞々しい会話、文工団のダンスや演奏、迫力ある戦闘シーン、背景となる時代のほのめかしなど、20年ほどの時間を、テンポよく2時間15分でまとめた、監督の職人芸が光る。中年男のシリアスな婚活を、爆笑のうちに描いた「狙った恋の落とし方。」などでもそうだが、フォン・シャオガンの職人芸は健在だ。

 「芳華-Youth-」は、2017年、中国で公開され、大ヒットしたらしい。4000万人が涙した、という。時代と、時代に翻弄される若者たちの青春が、生き生きと、丹念に描かれたからだろうか。あるいは、もう70歳前後の世代が、過去を回顧するために足を運んだのかもしれない。

 若い世代は、とても、社会を動かすほどの年齢ではない。だが、どのような時代でも、どんな困難に直面しても、必死に生きようとする姿勢は崩さない。そんな喜怒哀楽の青春の日々を生きる若者たちの群像が、鮮やかに伝わってくる。

 一党独裁ではないけれど、老人や若者などの社会的弱者にとって、ひどい政策ばかりの日本である。不満を抱えざるをえない若い人たちは多いと思う。現代中国の歴史の勉強も兼ねて、日本の若い人たちには、ぜひ見てほしい映画だ。

☆ 2019年4月12日(金)~ 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開

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