今週末見るべき映画「15年後のラブソング」
- futafuta0723
- 2020年6月23日
- 読了時間: 3分
――続いて、6月12日(金)公開の「15年後のラブソング」です。以下に。
(2020年6月11日「二井サイト」公開)

★「15年後のラブソング」
いつまでも「おとな」になりきれない人たちがいるものだ。現実でも、小説の世界でも、だ。
「15年後のラブソング」(アルバトロス・フィルム配給)は、イギリスの地方都市サンドクリフとロンドンを舞台に、ほどほどのいい年になる男性ふたりと、女性ひとりが、とにもかくにも、新しい人生を見つけ、真の意味でのおとなになろうとするコメディだ。
アニー(ローズ・バーン)は、ロンドンの大学で美術史を学んだ後、故郷のサンドクリフに戻り、父が館長を勤めていた郷土史博物館の仕事を、気ままな妹とともにこなしている。
アニーには、ダンカン(クリス・オダウド)という恋人がいて、いっしょに住んで、もう15年になろうとしている。ダンカンは、地元の大学で客員教授を務めていて、傍目からみれば、何の問題もないカップルに見える。
もういい年のダンカンは、突如、音楽シーンから姿を消したが、一世を風靡したロックシンガー、タッカー・クロウ(イーサン・ホーク)に夢中で、世界じゅうのタッカー・ファンのサイトを立ち上げ、そのサイトの管理人までこなしている。
90年代の初め、タッカーは、人気モデルのジュリーとの関係が破局を迎え、あるライブの途中で、人前から姿を消す。
いまや、タッカーオタクのダンカンに、アニーはほとんど愛想をつかしている。地下室にこもったダンカンは、タッカーの資料に囲まれ、おなじタッカー・ファンとのやりとりを楽しんでいる。
ある日、ダンカンは、タッカーがジュリーとの破局後に作ったアルバム「ジュリエット」のデモ音源を入手し、絶賛する。アニーは、ダンカンのサイトに、ぼろくそに批判したレビューを投稿する。
なんと、タッカーからアニーあてに、「君の評価は正しい。ファンサイトのやつらはいかれている」とのメールが届く。やがて、アニーとタッカーのメールのやりとりが始まる。もう15年もギターをしまったままのタッカーが、「君はどんな人?」と。アニーが答える。「この15年、人生をムダに過ごした女よ」と。
タッカーには、複数の女性との間に、4人の子どもがいる。その一人で、ロンドンに住む娘のリジー(アユーラ・スマート)が、臨月を迎えることになる。いまや、祖父になろうとしているタッカーは、ロンドンに向かうことにする。
いやはや、巧みな設定に、ニヤリとする。ニック・ホーンビィの原作小説がよく出来ているのだろうか、笑っているうちにも、どこかほろ苦くなっていく。ロンドンからシカゴに舞台を移して映画化された「ハイ・フィデリティ」もまた、ホーンビィの原作で、中古レコード店のオーナーの音楽オタクぶりの描写に、思わずニヤリとしたものだ。
アニー、ダンカン、タッカーのそれぞれの、おとなとしての新しい人生は、映画の終盤から始まったばかり。ある程度の年齢になり、自らの人生を振り返るもよし。いくつになっても、自らの人生を見直すことに遅すぎることはない。
タッカーを演じたイーサン・ホークは、優れたミュージシャンでもある。映画のための多くのオリジナル曲をいくつか披露する。なかなかの味わいだ。
監督は、ジェシー・ペレッツという人で、この監督の映画を初めて見たが、音楽関連のセリフに、並々ならない愛を感じる。もとは、アメリカのパンクバンド「レモンヘッズ」のオリジナル・メンバーだった。なるほど。
笑って、笑って、ちょっぴりほろ苦い。好きなパターンの映画だ。
☆ 2020年6月12日(金)~ 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
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