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今週末見るべき映画「ランボー ラスト・ブラッド」

 ――コロナ禍で、多くの映画が公開延期になりましたが、このところ、優れた映画が、相次いで公開されているようです。今週もまた、二本立て。6月26日(金)公開の「ランボー ラスト・ブラッド」と、27日(土)公開の「あなたの顔」です。以下に。

                       (2020年6月25日「二井サイト」公開)

★「ランボー ラスト・ブラッド」

なぜか、「ランボー」シリーズは、どれを見ても、泣けてくる。それは、ベトナム戦争のトラウマを抱えながら、巨悪に挑むランボーが、常に孤独の戦いを続けているからだろうか。このほどのシリーズ5作目「ランボー ラスト・ブラッド」(ギャガ配給)が、タイトル通り、シリーズの最後の作品となる。

 思えば、シリーズの第1作「ランボー」(原題「ファースト・ブラッド」)が公開されたのは、1982年だった。ベトナム帰還兵のランボーは、拷問を受けたトラウマを抱えたまま、さまざまな差別を受け、孤立していく。

 理不尽な現実に、ランボーは武器を手にする。痛快なアクションシーンに喝采はするが、全編に反戦ムードが漂い、ランボーの立ち居振る舞いは、悲しくさえある。観客として、映画のラストで思わず流す涙は、まことに複雑だった。

 第2作の「ランボー/怒りの脱出」では、ジェームズ・キャメロンが脚本に参加。服役中のランボーは、行方不明になった兵士の捜索で、ベトナムに派遣され、今度は、アメリカ兵の捕虜が拷問されるのを目の当たりにする。

 第3作「ランボー3/怒りのアフガン」では、タイのバンコクで暮らすランボーは、ソ連軍に捕らえられたかつての上司を救うべく、アフガニスタンに向かう。ヘリと装甲車の戦闘シーンは、迫力たっぷり。

 第4作は「ランボー 最後の戦場」だ。タイのジャングルでひっそりと暮らすランボーは、軍に捕らえられたNGOグループを救出するために、ミャンマーの軍事政権と戦うことになる。スタローンは、本作では、監督まで務めてしまう。

 いずれも、自らのトラウマをめぐっての孤独の戦いである。別にランボーは、好んで戦っているわけではない。多くの敵に、たったひとりで戦わざるをえない状況が、常に用意されている。ランボーは言う。「俺たちの誰ひとり、望んでいる訳じゃない。だがこれが俺たちの仕事だ。無駄に生きるか、何かのために死ぬか、自分で決めろ」。シリーズは、回を重ねるたびに、切なく、胸を打つ。

 さて、最新作にしてシリーズの最後となる「ランボー ラスト・ブラッド」である。

 舞台は、メキシコ国境に近いアリゾナの田舎。ランボー(シルベスター・スタローン)は旧知の女性マリア(アドリアナ・バラオーサ)と、その孫娘ガブリエラ(イヴェット・モンレアル)と、牧場を営みながら、おだやかに暮らしている。とはいえ、ランボーの心の傷は癒えていない。地下壕を堀り、戦争時のさまざまな武器を隠した場所に、ランボーは寝起きしている。たぶん、本作の戦闘シーンは、ここになるのではないかとの予感を覚える。

 ある日、ガブリエラは、かつてガブリエラを棄てて家出した父親がメキシコに住んでいることを知る。ガブリエラは、ランボーとマリアの反対を無視して、メキシコに向かう。

 ガブリエラは、父親と再会したものの、冷たくあしらわれてしまう。結果、ガブリエラは、メキシコの人身売買組織のマルティネス兄弟たちに捕らわれてしまう。

 もちろん、ランボーは、単身でガブリエラを奪い返すために、メキシコへ向かう。

 ランボーの憎しみは、半端ではない。深く、ただただ深い。それが、すべて敵に向けた凄絶な復讐となる。果たして、再びランボーたちは、安寧の時を迎えることができるのだろうか。

 全5作、単なるアクション満載の映画ではない。これは、戦争の、だから世界の不条理に向けた映画作家シルベスター・スタローンの痛烈な抗議であり、プロテストなのだ。

 「ラスト・ブラッド」では、文字通り、最後の、おびただしい血が流される。ホラー映画顔負けの凄惨なシーンが用意されている。賛否両論があるかと思うが、ランボーの怒りと憎しみの深さが推察できる。

 「ランボー/怒りの脱出」のセリフにこうある。「俺たちが国を愛したように、国も俺たちを愛してほしい」。全5作に通低するこのセリフが、「ランボー」シリーズに永遠の輝きをもたらしたことと思う。

 エンド・クレジットが、たまらなく、いい。号泣のみ。

☆ 2020年6月26日(金)~ TOHOシネマズの日比谷、新宿、日本橋、六本木ヒルズなど、全国公開

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