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今週末見るべき映画「真夏の夜のジャズ」

――アメリカのロードアイランド州ニューポート。1954年からスタートしたジャズ・フェスティバルがある。1958年の第5回ニューポート・ジャズ・フェスティバルのドキュメンタリー映画が、公開からほぼ60年を経て、このほど4Kでよみがえる。

(2020年8月16日「二井サイト」公開)

DVDだが、毎年、夏になると必ず見る映画が何作かある。その一本が「真夏の夜のジャズ」(KADOKAWA配給)だ。ジャズ好きなら、もうたまらない、宝物のような映画だろう。

 ニューポートの町の様子が映し出される。裕福そうな人の多い避暑地は、ジャズ・フェスティバルを控えて、うきうきした気分に満ちている。ヨットのアメリカズ・カップも同じ時期に開催されていて、華やいだ雰囲気だ。

当時、超有名なミュージシャンが、続々と登場する。

演奏の合間や、演奏中に、会場にいる観客の様子が映し出される。当時の最先端のファッションが分かる。

 監督のバート・スターンは当時、新鋭の写真家である。後に、オードリー・ヘプバーンやエリザベス・テイラー、マドンナ、晩年のマリリン・モンローなどの写真を撮ることになる。

 広い会場に、椅子が並べられ、準備が進む。さて、誰が、どんな曲を演奏し、唄うのか。

 曲目の多いのが、サッチモことルイ・アームストロングで4曲。次いで3曲がマヘリア・ジャクソン。アニタ・オディが2曲。後は1曲ずつだが、どれも力演、名演ばかり。

 ジミー・ジュフリー・スリーが「トレイン・アンド・ザ・リヴァー」を威勢良く奏でる。ピアノのセロニアス・モンクは「ブルー・モンク」を弾く。ソニー・スティットは「ブルース」を丁寧にブロウする。アニタ・オディは、「スウィート・ジョージア・ブラウン」と「二人でお茶を」を、華麗なスキャットで唄う。「ロンド」は、ジョージ・シアリング・クインテットで、軽快だ。

 演奏、歌が続く。ダイナ・ワシントンが「オール・オブ・ミー」を唄う。すでに観客の表情は恍惚となり、踊り出す人たちもいる。叙情的なアート・ファーマーのトランペットがサポートし、若々しいジェリー・マリガンのカルテットが「アズ・キャッチ・キャン」を奏でる。ビッグ・メイベル・スミスが「アイ・エイント・マッド・アット・ユー」を唄い、チャック・ベリーが「スウィート・リトル・シックスティーン」を唄う。後日、ザ・ビーチ・ボーイズが、「サーフィンUSA」としてカバーした名曲だ。

 盛り上がりがエスカレートしていく。チコ・ハミルトン・クインテットが、名曲「ブルー・サンズ」を演奏する。マレットを叩くリーダーに、フルートのエリック・ドルフィーがとけ込んでいく。圧巻の熱演が続く。

いよいよ、ルイ・アームストロングと、史上最高のゴスペル歌手と言われているマヘリア・ジャクソンの登場だ。ジャズ・フェスティバルは、最高の盛り上がりを迎える。

 2009年12月、「暮しの手帖」の別冊で「シネマの手帖」(暮しの手帖社・1333円+税)を共同で執筆、編集したことがある。このなかで、当時、なんとか入手できるDVDの映画250本(洋画150本、日本映画100本)の内容を紹介している特集がある。

 「キネマ旬報」の元編集長の植草信和さんに関口裕子さん、「ぴあ」の元編集長の坂口英明さんといった錚々たるメンバーが執筆に加わっている。このなかで、「真夏の夜のジャズ」をレビューしたことが、今、よみがえってくる。この別冊はすでに絶版で、ネットなどの中古販売で見つけるしかない。自画自賛だが、映画好きなら座右の銘ともいえる別冊と思う。

 思えばこの年(1958年)、マイルス・デイヴィスもまた、ジャズ・フェスティバルに参加している。ジョン・コルトレーンのテナーサックス、キャノンボール・アダレイのアルトサックス、ビル・エヴァンスのピアノ、ポール・チェンバースのベース、ジミー・コブのドラムと、今にして思えば、超豪華なメンバーだ。当時のミュージシャンの格付けを物語って、映像に編集されなかったのもいたしかたないか。

 このほど、「真夏の夜のジャズ」は4Kで見ることができる。60年前の映像、音響がくっきり。目と耳が釘付けになる。優れた表現は、60年を経ても、まったく、色褪せない。

☆ 2020年8月21日(金)~ 角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAにてロードショー!

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