「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」
――ジャン=ポール・ベルモンドが主演した8作品が一挙、公開される。快挙、だろう。「大盗賊」「オー!」「大頭脳」「恐怖に襲われた街」「危険を買う男」「ムッシュとマドモアゼル」「警部」「プロフェッショナル」だ。どれも、痛快。俳優ベルモンドの、さまざまな魅力が、たっぷり堪能できる。
(2020年10月22日「二井サイト」ブログ公開)
まだ高校生だった頃、頭がよくて、物知り、もちろん成績も抜群のM君を、半ば誉め、半ばからかったことがある。M君は、昼休みなどに、「嘔吐」を読んでいた。
「ジャン=ポールといえば、M君ならサルトルだが、ぼくらはベルモンドだなあ」と。
ハンサムなアラン・ドロンも人気があったが、あまり勉強の出来ない映画好き仲間では、ベルモンドがいちばんのアイドルだった。
ジャン・リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」や「雨のしのび逢い」でのベルモンドは、若々しくて魅力的だが、後のコメディふうの犯罪映画でも、さらに精彩を放つ。
このほど公開される8本は、「プロフェッショナル」をのぞいて日本で公開されているが、まさに、ベルモンド作品が堪能できる絶好の機会だろう。ざっと、紹介しよう。
●「大盗賊」(1961年)
べルモンドが、フィリップ・ド・ブロカ監督と組んだ初作品。18世紀のパリを舞台に、ベルモンド扮する女好きの盗賊カルトゥシュが大活躍する。アクションたっぷりのコメディに、クラウディア・カルディナーレが花を添える。1961年当時のカルディナーレが、際だってすてきだ。
●「オー!」(1968年)
元レーサーの若いギャングが成り上がっていく様子と、没落の過程を描く。「冒険者たち」に続いて、ジョゼ・ジョヴァンニの原作を映画化した監督は、ロベール・アンリコ。ジョアンナ・シムカスの可憐さもあって、日本でも、かなりヒットした。
●「大頭脳」(1969年)
コメディ演出に冴えをみせるジェラール・ウーリー監督作。現金を運ぶ列車を襲う、盗みのプロたちの作戦やいかに。ベルモンドに加え、デヴィッド・ニーヴン、イーライ・ウォラック、プールヴィルが、ドタバタふうのコメディを、楽しんで演じているよう。
●「恐怖に襲われた街」(1975年)
連続美女殺人鬼を追うベルモンド扮する刑事が、家並みの屋上を駆け回るアクションを見せる。監督はアンリ・ベルヌイユ。エンニオ・モリコーネの音楽が軽快。後の多くの映画に、大きな影響を与えたベルモンドの功績は大だろう。
●「危険を買う男」(1976年)
凶悪犯相手に、ハンターと呼ばれる事件請負人のベルモンドが犯人逮捕に向かう。「過去は金では買えない」とのオスカー・ワイルドの名言通りの映画。監督はフィリップ・ラブロ。
●「ムッシュとマドモアゼル」(1977年)
舞台は映画の撮影現場。スタントマンの恋と映画への愛が、爆笑のうちに描かれる。二役のベルモンドと、アクションが見もの。セクシーなラクエル・ウェルチと、特別出演のジェーン・バーキンにも注目を。監督はクロード・ジディ。
●「警部」(1978年)
監督は、ジョルジュ・ロートネル。ベルモンド扮する腕ききの刑事が、ニースからパリにやってくる。警察と犯罪組織との癒着を暴こうと大活躍。マリー・ラフォレの初々しさが、たまらなく、いい。
●「プロフェッショナル」(1981年)
日本での劇場初公開で、これだけは未見だ。舞台はアフリカ。暗殺事件に関わった諜報部員が裏切りにあう。そのリベンジが、アクションたっぷりで描かれる。エンニオ・モリコーネの音楽が、哀愁たっぷりで泣かせてくれるらしい。監督はジョルジュ・ロートネル。
屋上を飛び回る、全力で走る、列車の上によじ登る……。とにもかくにも、ベルモンドが見せるアクションは、本物だ。
シリアスな役でも、どこかユーモラス。しゃれたセリフのやりとり。クラウディア・カルディナーレ、ジョアンナ・シムカス、ラクウェル・ウェルチ、マリー・ラフォレといった女優たちの魅力。オールドファンには懐かしく、若いファンには新鮮。このほど公開のベルモンド作品は、どれも楽しめそう。
公開は10月30日(金)、新宿武蔵野館ほかにてロードショー!
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